実践的な教育

 久しぶりに登場、マーケティングの太田です。

 めっきり寒くなりましたね。

 風邪など引いていませんか?風邪を引いたら、ケチらずに医者にいって診てもらいましょうね。そして、周りにうつさないように気をつけてくださいね。ご自身が元気になるためにもたっぷり休養をとりましょうね。決して、医者にもいかず、薬も飲まず、いろんなことがもったいないといって学校やアルバイトにいって菌を撒き散らすことがないようにしてくださいね。そんな自己中心的な人は迷惑ですよ笑

 

 さて、今年度も2年生がゼミナールを選ぶ季節になってきました。

 今日はここで小生のゼミナールの取り組みについて書きたいと思います。

 太田ゼミナールでここ数年力を入れているのは、企業との取り組みです。

 

 今年度は、

・市田柿(高級干し柿)のマーケティングの計画・実行(南信州広域連合との共同事業)

・小野後にんじんのマーケティングの計画・実行(南信州広域連合との共同事業)

・焼き芋のマーケティング提案(神戸新聞社主催Mラボ:カネヘイへ提案)

・ケーキ・ショップ(アンリ・シャルパンティエおよびシーキューブ)のマーケティング提案(神戸新聞社主催Mラボ:(株)シュゼットへ提案)

 

4つを企業と共同で取り組んでいます。

 

 企業とともにマーケティングを考え、実践するというのは、本や論文を読んで教室で議論するよりも楽しいと思えるかもしれません。そう思ったあなた。甘い!

 学生が企業にマーケティング・プランを提案するというのも大変ですし、さらにそれの実行となると、かなりの苦労が発生します。

 太田ゼミで企業との取り組みを行なっている学生諸君は泣きながら(リアルに涙を流しながら)研究しています。それくらいの気合と根性が企業との共同事業には求められます。というのは、企業は遊びで学生と共同事業をしているわけではないのです。学生の思い付きに付き合ってくれるほど、企業には時間もお金もありません。企業は常に真剣です。その真剣さを汲んだ提案が求められるのです。

 

 なので、学生も腹をくくって、企業にマーケティング・プランを提案しなければなりません。「俺たちは学生で、企業はしょせん他人。その企業が成功しても失敗しても関係ない」、なんてスタンスでやることは許されないのです。企業の事業の失敗は企業にとって大損失(大損害)になるのです。なので、損害が出るような、また、現実的ではない提案をするのはもってのほかです。

 

 学生には、企業が直面している問題を正確にとらえ、その背後にある本質的な問題を抉り出し、その本質的な問題を解決するような提案が求められるのです。

 

 昨年から、今年にかけて複数の企業にマーケティングの提案をしていますが、太田ゼミの報告は地味ながら高い評価を得ています(嬉しいことです)。実際、昨年末にマーケティング・プランを提案した南信州の高級干し柿「市田柿」の「若者へのマーケティング」は、今年「贅沢な実」という製品として発売されます(このマーケティングの実行でも学生たちは涙を流しています。商品名を考え、作り、パッケージを考え、作り、チャネルを考え、交渉し、プロモーション・プランを考え、動画やチラシを作りなどなど、計画よりも実行の方が様々なコストが絡んできますのでハードルが多いし、高いんですね。)。


 

 企業から評価される提案には傾向があります。それは、その企業が抱えている「そもそも」のマーケティング課題を徹底的に考えたものが高評価となります。こういう売り方がいいですよ、というような表面的な小手先の提案だけ(当初、企業は小手先の提案を学生に期待するようなんですが)ではなく、「そもそも」の会社の強み、「そもそも」のその製品の消費者が感じる価値などを徹底的に考えたものが評価されているんです。

 

 「学生らしい新鮮な発想で」とか「若者に受けるような商品提案など」、と企業からリクエストが出るのですが、実際はその企業の方が「そもそも」の問題だととらえている深い問題を学生がじっくり考え、じっくり答えを見つけた出したものが評価されています。

 

 企業の方々は忙しいからなのか、本質的な問題をじっくり考えることができないのかもしれません。しかし、学生は幸い時間だけはあります。なので、「そもそも」をじっくり考えることができるのです。その「そもそも」を学生は自分の頭だけで考えるのではありません。既にある研究書や論文を読み理論を頭に入れ、かつ、企業の方々へのインタビュー、消費者へのインタビュー、アンケートなどで事実を入手し「そもそも」の問題を考えていきます。

 

 経営学の理論は、そもそも事実を説明するためにあります。理論を知っていることで事実とその事実の発生メカニズムを把握しやすくなり、その把握に基づき実践的な提案ができるのです。

 

 企業と共同で何かをするというと、本を読んだり論文を読むよりも実際の現場が重視されると思う方もいるかもしれませんが、それでは大学教育ではありません。実際の現場を理解するためにも本や論文を読みます。本や論文を読んでまた実際の現場に行きます。それを繰り返し、じっくり物事の本質を考えるのです。そして、じっくり考えた骨太で深い提案がやはり企業から高評価を得ます。「大学生らしい発想」というのは、実は、企業の方が忙しくて考えられない問題をじっくり深く考えることなんですね。