多幸感あふれる4月3日

マーケティングの太田です

昨日4月3日は経営学部の新入生歓迎会が開かれました。私はゼミの3年生とともに新入生をお迎えし、履修のアドバイスを行ないました。新入生というのはいいもので、新生活が始まり皆に「いい緊張感」が漂っています。そしてみんな目がキラキラしている。このキラキラを4年間維持して欲しいと切に願います。

昨日は新入生歓迎会を少し早く失礼し、東京の寄席(よせ)「浅草演芸ホール」に行ってきました。

寄席と聞くと、落語や下町といういわゆる「古臭い」イメージを抱くかと思います。確かに2020年代に当日券を現金でしか変えないチケット販売方法、建物も古いし、来ている人も決して若くない。ただですね、大学生の諸君が観ても聞いてもつまらないものかというと、そうではありません。

皆さん、寄席って何をしに行くところか、わかりますか?
この答えは、実に単純明快。
「笑いに行く」ところなんです。
これに例外はありません。
寄席には笑顔が溢れています。芸人は全力で客を笑わせに来ます。そして観客たちは、前のめりで笑いに行く。実に幸せに溢れた場所なんです。

昨日の浅草はラジオでもファンが多い神田伯山さんがトリ(メインの出演者。最後に出てきて長い時間かけて芸を見せる)、他にも漫才のナイツさんも出ていましたし、Eテレなどに出ている発泡スチロール芸人のできたくんも出演していました。
人気者が多く出演した昨日の寄席は立ち見こそ出ないものの2階席まで満員。なかには小学生や中学生も交じっておりました。

昨日は寄席の夜の部を観ました。
17時少し前から始まって終わったのが20時50分。
ずっと落語を聞いているかとそうではないんです。
寄席ってね、芸のリレーなんです。昨日は前座さんの落語(しかも『寿限無』(じゅげむ))から始まり、講談、コント、落語、漫才(ナイツ)、落語、太神楽(曲芸)、講談(人間国宝の講談!)、活動写真弁士(カツベン)、落語、できたくん、講談という流れ。芸人1人の持ち時間が15分、トリだけは45分。途中に1回の中入り(休憩)をはさみ、リレーのように続いていく。前の演者さんのネタを取り入れつつ、皆自身のネタをやっていったりして、トリの芸人のときにクライマックスがくるようにバトンが渡されていくんです。

とにかく昨日の浅草は爆笑ネタばかりでした。ナイツの漫才を15分聞いたことがありますか?テレビではできないような言えないネタ満載の15分で客席は大爆笑。太神楽は80歳のおじいちゃんコンビのボンボンブラザーズ。この2人がジャグリングを見せるんですが、それが見事。さらに客席を巻き込んでのジャグリングで舞台と客席が一体化。

トリは人気者の神田伯山先生。彼は人殺しとか嫌な奴が出てくる講談が得意なんですが、新年度だし春休みで子供が来ているということで、ケチな商売人が改心するという非常に前向き、しかも爆笑できるめでたい講談を読みました。『五貫裁き』という講談だったのですが、金をちょこまか貯めても使うところに使わなきゃいけない。貯めた金をどこに使うかで、その人間が評価されるかどうかが決まるんだ、という商売にまつわるお話。これは経営者を養成する経営学部の教育にも通じる話でありました。経営学を学んだ者は人からケチ呼ばわりされてはなりません。

昨日の寄席は本当に爆笑の連続でした。こんなに爆笑が続く寄席ははじめての経験。

上手い演者、ベテランの演者に共通していることがありました。まず、声がでかい、というか、客席に声が響く、届くんです。そして客席を巻き込む。先のジャグリングのように直接客席とやり取りするものもあれば、客全員と目を合わせるように芸を進める演者さんばかり。だからみんな間がいい。客席を1つの呼吸にまとめあげる。だから、笑うところは300人の観客が大爆笑、聞き入るところは前のめりで聞き入るという感覚。さすがすごい芸人さんばかり。この舞台と客席のインタラクション(相互作用)は、我々大学の教室にも取り入れたいですね。教える方は学生を乗せ、学生も前のめりで学びに来る。こんな大学ならば楽しいね。

昨日の客席は明るい大爆笑の連続。だから、最後は寄席ではそうそうないカーテンコール。最後に伯山先生と、数名の師匠たちが並んで、「新年度です。新たな生活を迎えたみなさんも多いことでしょう。新年度の皆さんのご多幸を祈念して、三本締めでお開きとしたい!」とのことで客席と高座で三本締め。ここにも新年度の幸せが溢れておりました。
こんな幸せなことが起こっている寄席は東京に4つもあります。毎日昼の部と夜の部で、こんなことをしているんです。名古屋にも大須演芸場があります。こちらは毎日ではありませんが、なかなかいい芸人さんたちが公演に来ています。ぜひ、笑いに、幸せを感じに寄席に足を運んでみてはいかがでしょうか?

追伸:昨日、寄席に来ていた小学生、中学生には芸人さんから何かしらのプレゼントがありました。できたくんからは、小学生、中学生からのリクエストに応えた発泡スチロールの作品が、そして何ももらえなかった小学生には、終演後、こっそり落語の師匠から扇子がプレゼントされたそうです。実にめでたい4月3日でした。